
DTPでIllustrator/InDesignのデータを扱うときは、正しいバージョンのアプリでファイルを開くことに心血を注ぎます。新しいバージョンで作ったファイルを古いバージョンで開くと、見た目が変わったり、最新の便利機能で作ったオブジェクトが拡張されてしまったりするからです。
特にIllustrator 2020以降のai/epsのファイル保存バージョンは、同じIllustrator 2020形式でも機能の追加や変更が頻繁に起こっています。実際は互換性がないのに下位バージョンでも開けてしまうわけです。そのため、間違ったバージョンで開いても気付かずに進めていることがたびたびあります。怖いですね。
幸いなことに、この問題を解決できるアプリはすでに公開されています。
Illustrator
- Glow Ai / Glee Ai(macOS用、ものかのさん作)
- いーぴーせれくと / いられせれくと(Windows用、とろ庵さん作)
InDesign
- Glow Id / Glee Id(macOS用、ものかのさん作)
- open_the_indd(Windows用、お~まちさん作)
- InDesign Version Check(macOS/Windows用、tu-kazuさん作)
- DTPOA(Windows用、InDesignerの悪あがきさん作)
Glow Aiは筆者も日常的に使っており、申し分ありません。ただ使っているだけに、次のようなより自分好みの仕様にしたくなりました。
- バージョンを検知してダイアログを開くまでの時間をより早く
- 矢印キーやEnterキーを打つ手数を少なく
- macOS/Windows両方同じアプリにして、無意識でも扱えるように
macOS/Windows両方使っていると、どっちがどの操作だったか混乱しますよね。
そこで今回は、Illustrator/InDesignファイルの作成・互換バージョンを調べ、適切なバージョンで開くアプリ Noria を紹介します。
目次
動画で見てみたい
あらましを教えて
Illustrator/InDesignファイルが作成または保存されたバージョンを調べ、適切なバージョンのAdobeアプリで開くアプリです。名前はNoria(ノリア)といいます。ちなみにNoriaとは水車のことです。
ついでにepsがベクター画像かラスター画像かを検知し、ベクターならIllustratorで、ラスターならPhotoshopで開きます。
判別できる書類の拡張子はこちらです。
ai, ait, eps
indd, indb, indl, indt, idml
Tauriと言う技術で作られたmacOS・Windows両対応のマルチプラットフォームアプリケーションで、どちらのOSでも動きます。インストーラはそれぞれのOS用に分かれています。
どのバージョンに対応してるの?
次の通りです。
- macOS 10.15以上に対応。macOS 10.15(Intel)、11.7/12.7/13.6/14.3/15.0(Apple Silicon)で動作を確認
- Illustrator CC 2019、またはそれ以上のIllustratorに対応。CC2019〜2025で動作を確認。それより古いバージョンでも動作する可能性が高い
- InDesign CC 2019、またはそれ以上のInDesignに対応。CC2019〜2025で動作を確認。それより古いバージョンでも動作する可能性が高い
macOS 10.14以下に対応していないため、macOSではIllustrator CS6と共に使うことはできません。CS6で作られたファイルのバージョンは検出できます。
- Windows 10以上に対応。Windows 10/11で動作を確認
- Illustrator 2023、またはそれ以上のIllustratorに対応。2023〜2025で動作を確認。古いバージョンでも動作する可能性が高い
- InDesign 2023、またはそれ以上のInDesignに対応。2023〜2025で動作を確認。古いバージョンでも動作する可能性が高い
Illustrator/InDesignの要件が比較的新しいバージョンになっていますが、単に開発環境として揃えられたのがそれらだっただけです。Adobeアプリがプログラムからファイルを開くことに対応していればいいので、古いバージョンでも動作する可能性が高いと予想しています。
どうやってインストールするの?
macOS用にはdmgファイルで、Windows用にはexeファイルでインストーラを用意してあります。ダウンロードして開けば指示が出るので、それに従って進めればOKです。
macOS
Windows
Windowsには関連付け用ツールも用意しました。詳しくは【まとめ】WindowsでIllustrator/InDesign書類をNoriaに関連付けるを参照してください。
インストールが済んだらNoriaアプリを開いてみてください。macOSではDockに、WindowsではタスクトレイにNoriaのアイコンが出てきたら成功しています。

バックグラウンドで動くアプリなので、普段はウインドウは表示されません。ファイルを開くときなど、アプリを呼んだときだけ出てきます。
起動できないんだけど
macOS
インターネットからダウンロードしてきた身元不明のアプリケーションは起動を阻止されることがあります。

macOS 14(Sonoma) までは、右クリックから[開く]を選ぶと起動できます(開発元が未確認のMacアプリケーションを開く(macOS 14) – Apple サポート)。
macOS 15(Sequoia) の場合は、右クリックからの起動ができなくなったようです。かわりに、システム設定 > プライバシーとセキュリティ > セキュリティ > アプリケーションの実行許可 を開いてください。そこに出る[このまま開く]ボタンを押すと起動できるようになります(開発元が未確認のMacアプリケーションを開く(macOS 15) – Apple サポート)。

Windows
セキュリティソフトMicrosoft Defender SmartScreenがインストーラの実行を止めることがあります。その場合詳細情報を押してください。実行ボタンが出て進められるようになります。

どう使うの?
呼び出し
Noriaアプリを起動しっぱなしにして、次のどちらかの動作でアプリを呼び出します。
- NoriaアプリのアイコンにIllustrator/InDesignファイルをドロップする
- Illustrator/InDesignファイルをNoriaアプリに関連付け、Finder/Explorerにてダブルクリックなどで開く
もしIllustrator/InDesignファイルとマッチするバージョンのアプリがちょうど起動していたら、そのままマッチしたバージョンでファイルが開きます。
そうでなければダイアログが出てきます。そこで作成バージョンと互換(保存)バージョンが確認できます。ファイルを開くバージョンを選んでください。アプリアイコンの横に丸●がついている項目は、現在起動中です。


Windows版は、開発上の都合によりmacOS版とアイコンの見た目が異なります(改善方法を検討しているところです)。あらかじめご了承ください。
終了
Noriaはウインドウを閉じた後も自動的に終了せず、呼び出されるのを待ちます。常駐アプリです。止めたい場合は手動で操作する必要があります。
macOSの場合は通常通りDockやメニュー・キーボードショートカットなどから終了してください。Windowsの場合はタスクトレイにNoriaのアイコンがあるので、そこでQuit Noriaを選びます。

何も起きないんだけど
最初の起動ではウインドウがちらりと見えるだけで、何も起こりません。Noriaアプリは起動したあと常駐するので、アプリが起動した状態で対象のIllustrator/InDesignファイルを開いてください。
Windows
セキュリティソフトがNoria内蔵のdoscript.exeをウイルスとみなし、隔離した可能性があります。復元して元の場所に戻してください。その後doscript.exeを無視する設定に変更すると、次回から実行できます。
ファイルの配置場所は、アプリをインストールしたフォルダとまったく同じ階層です。

具体的な対処方法は各自ご使用のセキュリティソフトのマニュアルをご覧ください。doscript.exeは、インストールされているAdobeアプリを見つける、ファイルをAdobeアプリで開く、などの処理を担当しています。
環境設定はどう開くの?
macOS
アプリを起動した状態で、メニューのPreferences…(macOSのバージョンによってはSettings…)を選ぶと開けます。ショートカットはcommand+Kです。

Windows
アプリを起動した状態で、タスクトレイのPreferences…を選ぶと開けます。Noriaのウインドウが出ているときには、ショートカットCTRL+Kが使えます。

どんなことが設定できるの?

🔽 バージョン一致判定タイプ
ファイルとIllustrator/InDesignアプリのバージョンを比較するとき、どこまで一致したら同じとみなすかを制御します。これはバージョン選択ダイアログをスキップして直接ファイルを開くかどうかの判断や、ダイアログを表示したときに最初から選択状態になっているバージョンのアプリの判定のための項目です。
メジャーバージョンまで一致 (例: 24)
バージョンが24.0.0だとしたら、24までの一致で同じとみなす
マイナーバージョンまで一致 (例: 24.0)
バージョンが24.0.0だとしたら、24.0までの一致で同じとみなす
✅ バージョン一致で選択ダイアログをスキップ
ファイルとIllustrator/InDesignアプリのバージョンを比較して一致したとき、バージョン選択ダイアログをスキップして直接ファイルを開くか、それとも必ずダイアログを表示するかを制御します。
✅ 互換バージョンで開くのを許可
Noriaは基本的に作成バージョンを見てファイルオープンの可否を判断していますが、これをONにすると互換(保存)バージョンが対応していればオープン可能になります。例えばIllustrator 2025 (29.0.0) で作成し、2020 (24) 形式で保存したaiファイルの場合は次のような動作になります。
ON: Illustrator 2020かそれ以降でファイルを開ける
OFF: 上位バージョンで開くのを許可の設定により、Illustrator 2025のみでファイルを開ける、またはIllustrator 2025かそれ以降でファイルを開ける の指定したほうになる
✅ 上位バージョンで開くのを許可
ファイル作成バージョンがアプリのバージョンより新しければ、オープン可能にする設定です。例えばIllustrator 2025 (29.0.0) で作成したaiファイルの場合は、次のような動作になります。
ON: Illustrator 2025かそれ以降でファイルを開ける
OFF: Illustrator 2025のみでファイルを開ける
ただし、互換バージョンで開くのを許可 がONの場合はそちらの設定を優先します。
✅ 選択しなかったバージョンのアプリを自動終了する
Illustrator/InDesignの複数バージョン起動はミスを招く要因です。この設定をONにすると、ファイルを開いたバージョンのアプリだけ残して、ほかのバージョンに終了処理をかけるようになります。
保存していない書類が残っている場合は、手動で終了するときと同じように保存するか訊かれます。アプリ終了処理はそこで待機するので、自力で操作し対応してください。
✅ Adobeアプリから書類アイコンを取り込む (macOS)
macOS限定の項目です。ONにすると、最新のIllustrator/InDesignから自動でai/ait/eps/indd/indb/indl/indt/idmlの書類アイコンをNoriaに取り込みます。Finderでこれらの拡張子をNoriaに関連づけたときにいつもと同じアイコンになり、見分けやすくなります。
これでまた少し仕事が速くなりました。今日もさっさと仕事を切り上げて好きなことをしましょう!
作者に感謝を伝えたい!
Buy me a coffeeは、クレジットカード払いなどでクリエイターにコーヒーをおごれるサービスです。ツール・情報が役に立った! 感謝の気持ちを表現したい! というかた、おごっていただけましたら嬉しいです☕️
こちらのアプリは、ものかのさんに似たようなアプリを作る許可と助言を、お~まち@自動組版&InDesign&Affinityさんにアドバイスをいただき制作しました。ありがとうございます。
環境設定の追加でさらにものかのさんのGlow Aiに似てきましたが、それも許可いただきました。ありがとうございます。
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便利に使わせていただいています。ありがとうございます。
ファインダでIllustratorのファイルを複数選んでダブルクリックすると、
紐付けされたNoriaを通して、Illustratorで開いてくれますが、
1点のファイルだけしか開きません。
PSDファイルは選んだ複数のファイルが開きます。
何故でしょうか?
macOS Sequoia 15.3.1、Mac mini2024、Illustrator2024・Photoshop2025
コメントありがとうございます。
Illustratorファイルが1つだけ開くのは、1つであればバージョン選択ダイアログがシンプルでわかりやすくなるからです。複数一気に開くのは混乱のもとなので、あまりその方向で便利にしたくないというものあります。
NoriaはPSDに対応していないし、対象の拡張子以外は無視する設定です。おそらくはNoriaに関係のない、通常のPhotoshopで開く動作になっているのではないでしょうか。
Photoshopは勘違いでした、申し訳ありません。
InDesignもIllustratorと同じく、1つしか開かない設定なんですね。
了解しました。
このところ、作ったバージョンで開くだけなので、バージョン選択ダイアログを通さずに
使っていました。まとめて複数開くことがよくあり、その場合は、Dockのアプリのアイコンに
ドロップする方法ですね。
そのワークフローならNoriaを通さないほうがスムーズかもしれませんね